明延鉱山軌道



撮影日=昭和53年 2月 16日(木)

Vol.1









通称明神電車(めいしん でんしゃ)、またの名を1円電車、正式名は…

(?_?)

なんだろ…?(笑)
明延鉱山軌道で正解?
(・・?

明神電車とは延と子畑を結ぶから、1円電車の名は乗車賃に由来します。
かつては鉱業所関係者が1円、その他の者は10円だったそうですが、
いつしか1円に統一され、乗車券も発行していました。
昭和46年頃、『1円で乗れる電車』として話題となり、
にわか鉄や野次馬が殺到して現場は混乱したそうです。
そのせいで構内立入禁止、列車の便乗も一切禁止となってしまいました。
しかし時の流れによって、これらの禁止事項は緩んでいたのです。
二日前に行った明延鉱業所でも『構内立入禁止』の看板はあちこちで見かけましたが、
実際に『軌道の写真を撮りたいんですけれど…』と尋ねたところ、快諾されました。
ただ、『撮る』のと『乗る』とでは随分違うはず… で・す・が…

和田山駅の待合室で知り合い、一緒に播但線を撮影した埼玉の鉄チャンSさん。
明神電車には簡単に乗れる!と言っていますが、ホンマかいな?


播但線の新井駅から全但バスに乗り、神子畑へと向かいます。
かつて神子畑~新井間には軌道があり、鉱石輸送を行っていました。
それ以前は生野鉱山とを結ぶ馬車道があったそうです。
往時の面影を残す鋳鉄製の橋が今もあるらしいのですが、
訪問した時には、そのようなことを知りませんでした。

神子畑には大きな選鉱場があります。
しかし町らしい町はありません。
周辺には民家がチラホラくらい、明延に比べると寂れた印象でした。









選鉱場の正門。
軌道にたどり着きました。
ふたつのトンネルに挟まれた人車乗り場です。
ここにも看板が…
人車待合室の時刻表。
隧道の向こうにTLの姿が見えました!








ハッキリとした記憶が無いのですが、先ず正門守衛所で来訪を告げました。
すると何処かの事務所に案内され、『軌道の撮影に来た』と伝えたと思います。
特に面倒なことも無く、非常に簡単に許可されました。
軌道があるのは山の中腹で、結構な坂道を登ったような覚えがあります。
インクラインに沿った歩道を辿ったような気も…
この辺は曖昧ですが。

ようやく到着したのは人車乗り場でした。
神子畑選鉱所とはトンネルを隔てて数100m程離れており、
ポイントや側線が無い軌道一本だけの停留所。
勿論ホームなどは無し、それでも小さな木造待合室がありました。
待合室には時刻表があって、全但バスの連絡までが掲載されています。
『足』として利用する人が多かったのでしょうね。
この時は人車を待っている人は、ボクらの他には居ませんでしたが。
上の時刻表をご覧ください。
ボクらが乗ったのは、恐らく13:50発の列車です。











トンネルから顔を出したTL。
TLの次位は荷物車です。









事務所で立入許可をもらった際、乗車に関しては触れなかったように記憶しています。
なにしろ、ボクは神子畑初訪問ですから、全てSさんにお任せ。
過去に乗ったことのある人の要領に頼るのみです(苦笑)


半信半疑のまま、いよいよ人車列車出発の時刻です。
人車はやや長いトンネルの向こう側、選鉱場に停まっています。
眺めていると、やがて動き出してトンネル内を接近して来ました。







SさんがTLの運転士さんに…
『こんにちは~! 乗せてくださ~い!』
と、伝えたような…






へっ!?
こんな軽いノリでいいの?!







と、思った瞬間…






『いいーよー!』








(・_・;)








(^^♪








うぉ~!

乗れる~(^O^)/








前回、明延鉱業所に行った時には『便乗禁止』が頭にこびりついていました。


気軽に
『乗せて~!』
と言えば、

『いいよ~!』
ってな感じになったかも。


先入観や思い込みって損しますね…




まっ、これで乗車の技?を覚えたので、ヨシとしましょう。












くろがね号から見た後尾のTL。
走行中に扉を開けて撮影!
くろがね号の車内。金属製のバケツは暖房用? それとも灰皿?
行く手にトンネルが見えてきました。
あれが最長の第三明神トンネルです。










明延鉱山軌道の本線は、神子畑選鉱所と明延鉱業所の間、約6kmを結んでいました。
途中には四箇所にトンネルがあって、最も長いもので約4km、他も数100mずつ、
即ち軌道の8~9割はお天道様とは無縁の真っ暗闇、という訳です。
最長のトンネル内には交換所がありました。
訪問の頃は最盛期に比べて運行本数が減少し、鉱石列車同士の交換は無かったと思います。


人車列車は5両編成でした。
明延側から…
18号TL+荷物車+二軸人車+ボギー人車+5号TL
というプッシュプル編成。
但し、進行方向最後尾となるTLは、パンタを降ろした無動力でした。
両端での機回しを省略するのが目的でしょうが、ちょっぴり贅沢な編成ですね。
人車には愛称があり、二軸は「わかば号」、ボギーは「くろがね号」というサボが付けられていました。
ボクらは「くろがね号」に乗車。
扉は折れ戸、半流形の車体がカッコいいです。
窓は小さく、鉄格子が付いていて護送車のようです(笑)
ボギー車で、マトモそうな台車を履いていたのですが、乗り心地は凄かったです。
ギシギシ、ガリガリ、ゴゴゴゴ…というサウンド、そして直接的な振動。
なかなか楽しいアトラクションでした。
距離と所要時間からすると、平均24km/hくらいでしょうか。
走行中に扉を開けて撮影しましたが、まったくもって余裕な感じです。









トンネル内では裸電球の明かりだけ。
ストロボで撮っちゃいましたが…
妻面の窓から15号TLを眺める。
ガラスが曇っています…
トンネル内の交換所。(のはずです…)
横は鉱石列車か?壁?













轟音を響かせてトンネル内を進んでゆきます。
途中、件の交換所では鉱石列車とすれ違いました。
アウトドアでは楽しい乗り物ですが、坑道内では少し恐怖感を覚えます。









坑道内はこんな感じ…









10分以上はかかったでしょうか、人車列車はやがてトンネルを抜け出ました。
恐怖感は去り、清々しい気持ちになります。
相変わらずギシギシというノイズは続くものの、急に静かになったような気もしました。











長いトンネルを抜けました。
道路や民家が散見されました。
明延の町外れ?
最後のトンネルに入ります。
これを出ると明延鉱業所の構内です。












二日ぶりの明延鉱業所、明神電車に乗って到着しました。
着くとすぐに最後尾の5号TLが解放されました。
構内の端まで行き、車庫へと向かってゆきます。
点検? それとも交換でしょうか?










一つ目小僧のような風貌…
帰庫しました。












TLが解放されたため、「くろがね号」の姿をバッチリ撮れました。
妻面の金太郎掛けが可愛い…❤








(^O^)/




【くろがね号・データ】

 全長 5830mm
 全幅 1250mm
 全高  1905mm
 車輪直径 390mm 
 定員  23名
 製造年  昭和24年
 製造所  明延鉱山工作課 神子畑機械工場

※参考資料=養父市HP



「くろがね号」は明延鉱山が三菱鉱業時代、おエライさんの視察乗車用に造られたそうです。
なんだか特別な雰囲気を感じるのは、そのせいだったんですね。














(*^^)v





こちらは「わかば号」です。
詳細なデータは不明ですが、昭和35年に自社で製造されました。
裾絞りの車体、厳つい台枠、折り戸の扉が特徴です。


















おおっ!









明神電車の軌道から麓を見下ろすと、508mm軌間のトロッコが動いていました。
二日前に行った際に見た、坑木運搬用軌道のようです。








さあ、またまた明延鉱業所構内を撮り歩いてみましょうか…

つづく~♪








◆1978年 2月 16日撮影◆










ペンタックスMX




ペンタックスSP-F















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