東金トロッコ商店街


伊勢孫本店








所有事業所=伊勢孫本店
運行区間=店舗前~作業場/作業場~室
軌間=460mm












【概要】


千葉県東金市にあった麹の製造販売店です。
さして広くもない敷地ではありましたが、ここで軌道が用いられていました。

軌道は店舗の正面からスタートし、90°カーブして玄関から敷地内に入ります。
10m程でポイントがあり、右手作業場へと通じていました。
ポイントのすぐ先には小さな転車台があり、ここからも右手作業場に分岐します。
作業場は屋根の下にあって、行き来できる建物内に麹の原料となる米を蒸す竈が置かれていました。
店舗前から作業場まではコンクリート地面の併用軌道です。

作業場から先は枕木が露出する専用軌道でした。
作業場を出ると登り勾配が続き、約50m先で敷地の裏山に突き当たります。
この山に麹を培養する室(ムロ)がありました。
室は二つあり、転車台で線路を分岐する仕組みになっています。
店舗で軌道を保有し、店先と倉庫などの運搬に用いる例は多く見られますが、
たいていは分岐器の類が無い単純なレイアウトです。
しかし伊勢孫ではポイントレールと転車台を使い、複雑な線路配置を形成していました。

そして最大の特徴は、動力車を有していたことです。
木製台枠に耕運機のエンジンを載せたオリジナル機関車。
実は軌道を敷設したのも、その機関車を製作したのも伊勢孫本店のご主人だったのです。
鉄道の知識に明るかったご主人が、自己流で軌道を敷設しました。
室までは勾配があるため、人力での運搬が難しいので機関車も造ったとのことです。

この機関車が活躍するのは、作業場から室へ蒸米を運搬する時でした。
作業が始められるのは未明、洗米、含水した米を大きな釜で蒸し上げます。
蒸米はムシロに入れられ、もうもうと湯気が上がったまま台車に載せられ、
それをオリジナル機関車が推進して勾配を登ってゆきます。
室の前に到着すると、蒸米を小さな台車に積換えて室の中へと入れます。
蒸米は麹蓋という木製の入れ物に盛られ、室の中で麹へと変化してゆくそうです。
残念ながら見ることは出来ませんが、室から出す際は台車に麹蓋を載せ、人力で作業場まで運ぶとのこと。
室内で乾燥されると、製品としての麹が出来上がります。

伊勢孫を訪れたのは四度だけでした。
軌道の写真を撮りに来た旨を告げると、最初は驚かれた様子でしたが、
麹と同様に愛情を注がれていたのでしょう、嬉しそうな表情も垣間見られました。
ご家族で経営されていたお店で、皆さん優しい方ばかり。
図々しくも居間に上がらせていただき、コタツでお茶をごちそうになったこともありました。
拙著を上梓した際、確か届けに伺ったような…
ちょっとうろ覚えですが、その頃以降は訪れることもなくなってしまいました。

残念なことに、平成12年頃に伊勢孫本店は廃業してしまったそうです。
ストリートビューで見ると、何が何だか判らない様子…。
軌道もろとも跡形もありません(T_T)/~~~
すっかりご無沙汰したことを強く後悔しました。





【車両】

◆機関車◆
耕運機改造機関車(自作)
動輪4軸 その他詳細不明


◆運搬車◆
台車 大小各種多数
詳細不明







【訪問日】


昭和56年 11月 29日

昭和57年 2月*日

昭和58年 12月 24日

昭和59年 1月 7日

















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