THEトロッコ 2021


① トロッコ趣味界の革命








およそ8年ぶりの再会  2021.5.21




かつて林業や鉱山などで活躍した超狭軌鉄道、
いわゆるトロッコと称されるものは鉄道趣味界に於いてごくマイナーな扱いであった。


鉄道雑誌などで掲載されることは稀であったが、とある単行本の発刊によってその流れは一気に変化する。


「知られざるナローたち」。

1981年にレールガイ別冊として出版されたこの本には、
日本各地で活躍するトロッコの姿が掲載された。

それまでのトロッコ趣味はコアなマニアだけが楽しむものであり、
悪いことにその中で多くの人々がトロッコの存在を周知されるのを極端に嫌う傾向にあった。

もちろんインターネットなんてものはないから、情報には非常に乏しい時代である。
鉄道誌で紹介されることは滅多になかったので、我々を含め、件のコアなマニアたちは地図から探す、
鉱山要覧から探す、人づてに聞く、といった手段でトロッコを探り当てていた。

そして見つけたトロッコは「言わない・知らない・教えない」が原則で、
とあるヒトは廃止後に「あれ? 言ってなかったっけ?」 なんて、
超わざとらしいコトバで存在を初めてを教えたというトンデモない話さえある。

要するに陰湿で険悪な性格の者たちが多かったのである。
見つけたトロッコは「自分のもの」という勘違いをしていたのではないかと思う

ところが「知らナロ」は惜しげもなくトロッコの存在を公表したのである。
勘違いをしていた人々は、さぞかし地団駄を踏んだに違いない。

しかし一方ではトロッコの面白さ、楽しさ、可愛らしさ等々をこの本で知り、
ファンになったという人たちも居る




1983年、企画室ネコから月刊レイルマガジンが創刊された。


企画室ネコはもともと自動車趣味誌を主としていた会社だったが、
スタッフは鉄道もこよなく愛する面々であった。

おしゃれなクルマ本は世を忍ぶ仮の姿、しかしその実態は鉄チャンだったのである。
そして遂に出した鉄道月刊誌は、既存の鉄道雑誌とは一線を画していた。


申し訳ないが、既存の鉄道雑誌はマニアが喜ぶ専門的な内容ばかり。
当たり前だが資料としては大いに役立つし、正統派鉄道写真の参考にもなっただろう。

かし当時のレイルマガジンには「遊び心」があった。
鉄道が好き、でもクルマも好き、温泉や食べ物、モチロン女の子も大好き、
要するに視野が広かったのである。

ガチガチだった鉄道趣味界に於いて、まさに革命的な創刊だったとしても過言ではない。


そのレイルマガジンの中には「THEトロッコ」という連載記事があった。

現役のトロッコを毎月惜しげもなく紹介するという代物である。
「知らナロ」に続き、コアなドマニアたちの間に大きな波風を起こしたことは言うまでもない。


或る者は風刺画で、また或る者はコトバで「THEトロッコ」を揶揄した。
実に大人げない幼稚な行為ではあるが、いずれも業界では広く知られたヒトである。
詳細は割愛しておこう(笑)

「知らナロ」と「THEトロッコ」によって、 トロッコ趣味が僅かではあるが広まったことは間違いない

そして以前のコアなマニアたちだけではなく、
視野が広く、 オトナで、楽しむことが大好きな人々がトロッコファンになった。

当然のことながら、雰囲気は明るくなる。

ところがトロッコは激減し、現在に至ってはほぼ絶滅状態になってしまった。


今のトロッコ趣味は現存するものをひたすら追う現役派、
過去の写真や配線跡を探求するトロッコ考古学派、
および自らの理想像を縮尺して表現するトロッコ模型派に分類されている。

その筆頭である現役派にとって魅惑の存在なのが立山砂防軌道である。








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