フィリピン
ネグロス島
Negros
Philippines








マ・アオ製糖工場
Ma-ao Sugar Central



撮影日=1981年 3月13日(金)










事前情報によると、このマ・アオ製糖工場は運転本数が少なく、撮影効率の悪い路線とのことだった。
しかし、勾配区間が点在するため蒸気機関車は威勢よく煙を上げるらしい…
そう聞いたなら、やはり行かざるを得ないだろう。
詳細は失念したが、マ・アオでは前日のうちに収穫したサトウキビを
朝イチで工場へ搬入するという運転がされていたはずである。
そのため、バコロドのシーブリーズホテルを暗いうちに出発。
クルマが進むにつれて徐々に明るくなり、やがて朝露の降りた軌道にたどり着いた。

当時は深く考えてはいなかったが、最近になって疑問を感じることがある。
この時はガティアが指示を出し、タクシードライバーが迷うことなく線路際に到着した。
ひょっとすると、途中で工場に立ち寄って何かを聞いたのかも知れないが、
それにしても軌道なんて山のようにあるのに、なんで汽車が走って来る線路が分かるのか???
携帯電話やカーナビなんてない時代だ。
彼は地図を見る訳でもなく、鼻歌を歌いながらドライバーにあれこれ伝える。
ただそれだけ、道路標識だって僅かしかない。
あの頃は「インチキ臭いガイドだなぁ」なんて思っていたが、かなりキレる奴だったのかも知れない。
減に撮影の成果も上々だったのだから。

ひんやりとした空気に包まれたサトウキビ畑。
朝もやの向こうから、汽車が姿を現した。










来たよ~♪
















然程の長編成ではない…
































ラ・カルロッタ、ハワイアン・フィリピンと同じ914mmゲージ。
しかし、他の路線よりも軌条などが貧弱に見えた。



















草生した軌道を踏みしめて接近して来る。
いったい、どれだけの列車が運行されていたのだろうか。

















だだっ広いサトウキビ畑のど真ん中。
やって来た汽車は、ゆっくりと速度を落としてゆく。











そして停車…









我々の目の前で汽車は停まった。
ガティアが停車するように合図を送ったのである。
困惑する機関士たちに対し、件の「お墨付き」を見せた。
怪訝そうだった表情が、一気に穏やかになる。
ここでも効果は絶大だ。











そして…









ここでも機関車に添乗し、撮影しながら進むことになった。
こういった段取りがなければ、さぞかし不便だっただろう。





























所々勾配があるのか、さかんにバガースをくべていた。
火力を増すためにオイルを入れることもある。
それは廃油のようで、杓子ですくって投入していた。






























南さん曰く「タイコ腹の機関士」。
一見強面だけど、実は温厚で優しい人だった。



















陽が昇ってきた。
今日もお天気良さそうだ。














罐焚き作業は何処の国でも大変だ











途中、見通しのきく場所があったので一旦停車。
我々は降りてカメラを構えた。













発車!















朝陽に機体が輝く











これは、あくまでも「撮影用」の発車である。
ある程度加速したところで、また停まった。
ふたたび乗り込んで先へと進む。

ところが、機関車から異音が発生して緊急停車。
機関士たちが点検すると、どうやらクランクピンが破損したらしい。
まさかのトラブルである。
乗務員一同協議の結果、二名が工場まで徒歩で向かって救援機関車を呼んでくることになった。
工場までの距離は、およそ7kmだという。
ざっと三時間は足止めを食らうことになってしまった。













タイコ腹機関士が故障個所を見ている…















ん? こんなところに…











周囲を見回すと人家らしき建物はなさそうだが、何処からともなく子供たちが集まってきた。
普段は走って過ぎるはずの汽車が停まっているので、珍しくて見に来たのかも知れない。












屈託のない笑顔が印象的だった











機関車の脇では乗務員たちが集合し、なにやら討論会が始まっていた。
言葉はサッパリわからない。
機関車のアクシデントについてだろうか。
ガティアに尋ねると、「これから食事にします」とのことだった。
???











サトウキビをもらってご満悦?のボク。
左が畑さん、右はガティア。
テンダーにつながれていたニワトリ。
こいつの運命は…(汗)
線路際での炊飯。
絶命に至らしめた鶏…
血は調味に使用される。
加工されてゆくニワトリ君。
実は、この小川の水が全ての調理に用いられた。
機関車のスチームによって下処理が施される。
なんと!レールで包丁を研ぐ!
中華鍋に油、ニンニクなどが投入される。意外と本格的だ。
彼らは役割分担がしっかりしていて、とても手際が良い。
見物の子供たちも物欲しげそうだ。
匂いにつられて来た?(笑)











テンダーにはニワトリの他に野菜、米などが備蓄されていた。
こうした食事会は、文字通り日常茶飯事なのかも知れない。

出来上がったのは、鶏肉と野菜のスープが飯にかけられたものだ。
食器は、乗務員たちが使うものが用意されていたが、比較的マシなものがボクたちに提供された。
それでも正式な食器ではなく、缶のフタみたいなものである。
料理の基となる小川の水は薄茶に濁っているため、飯はまるで茶飯のような色だった。
それを除けば意外においしく、警戒しながらも完食。
ちなみに時が経過しても、腹痛などは起こらなかった。











まさか、こんな体験ができるとは…
バカースを利用したテーブル!












なんとも面白い食事会であった。
機関車のアクシデントはいただけなかったが、通常ではこんな体験はできないだろう。
結果オーライということか。










自らのスチームで洗車!
姉妹だろうか。ずっと周囲に居たような気がする。












まったりとした時間を過ごしていると、彼方から汽車の音が響いてきた。





















救援機関車登場!
姿を見せたのはファーストナンバーだった。
烽火の如く舞い上がる煙。
まさか工場へ向けての知らせではあるまい。
あちこちが歪んでいるが、大丈夫なのだろうか…













エンコした3号機のテンダーから
















歪んだ機関車が工場へと導く











救援に来た1号機は3号機に連結し、工場まで牽いてゆく。
そう! 重連である。
この雄姿をじっくりと狙いたいところだが、既に時間の余裕がないらしい。
仕方なくキャブに添乗し、工場へと向かった。

工場の手前で川を渡る。
なんと、ティンバートレッセルではないか!
これは何としてでも撮らなくてはいけない。
ガティアに交渉してもらい、橋のたもとで我々は下車。
列車はゆっくりと後退していった。
慌てて撮影場所を探す。













バラック






子供たちに水浴びをさせる場所?
目的は不明であるが、見た目は南国らしい施設である。
その向こうで臨時重連が発車した。

















不思議そう…






見慣れぬ日本人が珍しいのだろう。
とても不思議そうな表情でこちらを見ている。
この時はカメラ1台で移動しながら夢中で撮影した。
フレーミングなど考える間もなかったため、かなり雑な写真になってしまった。

















ティンバートレッセル!







よく見ると、川を渡る部分は鉄橋になっているようだ。
事前情報では存在すらも知らされていなかったティンバートレッセル。
それも予想だにしない重連である。
あえて贅沢を言わせてもらうなら、機関車が前向きだったらなぁ~
でも大きな収穫であったことは間違いないだろう。














工場に到着した列車。約3時間遅れか?
機関車は切り離され、故障の3号機は1号機に連れられて去った。
実にユニークなDL。
変てこな台車、それもロッド式!
ちゃんと観察しておけばよかった…(*_*;
工場構内に車両の数は少なかった。
既に鉄道輸送が衰退していたのかも知れない。










結局、マ・アオでは1本の列車を撮影しただけに終わった。
アクシデントがなければ、もう少し撮れたかも知れない。
しかし、その代償ではないが大変貴重な体験ができた。
自分の鉄チャン人生に於いても、トップ10にランクされるような出来事である。
そして、最後にティンバートレッセルを渡る重連の姿を捉えることができた。
この収穫は大きいと思う。














最高の思い出













【使用機材】


ペンタックスMX



ペンタックスME-Super












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