ネグロス島屈指の高級リゾートホテルにも難点があった。
それは虫などとの戦いである。
夕食後もルームサービスでビールを呑んでいた。
最初は南さんの部屋で呑んでいたのだが、お開きになると自室でひとり呑み。
さんざん呑んだあと、いよいよ就寝という時になってから敵の存在に気付いた。
蚊の羽音がうるさい。
フロントに電話をして「モスキート!」と伝えると、蚊取り線香を持ってきてくれた。
これで一段落かと思いきや、ハエやアブのような奴らもいる。
そいつらは新聞紙(だったかな?)で退治。
これで安心!とばかりにベッドに入り、まどろむがまた物音が始まった。
部屋の明かりをつけると、それはヤモリだかトカゲだかわからない爬虫類。
壁に張り付き、のそのそと動き回る。
これにはまいった。
暗くなるとゴソゴソと行動開始し、電気をつけると高速で身を隠す。
そんなことを繰り返し、ウトウトするが気になって熟睡できず、結局は朝を迎えてしまった。
寝不足の二日目、ターゲットはハワイアン・フィリピン製糖工場だ。
前日のスパニッシュ系とは打って変わり、アメリカンな社名である。
場所はラ・カルロッタとは反対方向、バコロドシティから約10数km北上したところ。
昨日に引き続き、チャーターしていたタクシーで現地に向かう。
気がつくと走っていた道路には軌道があり、更に工場に接近した頃に車両の姿を発見した。
スクールバスもアメリカ風だった。 | |
これが最初に見かけた車両。一般客らしき人々が乗っている。 |
何処かへ向かって走り去った
ここはハワイアン・フィリピン製糖工場の正門付近であった。
道路脇には店舗もあり、さながら町のターミナルといった様相である。
ひょっとすると件のレールカーは地域輸送をしており、ここが乗り場だったのかも知れない。
工場正門に保存されていた1号蒸気機関車
ガティアが工場側と交渉をしている間、 この機関車を観察していると子供たちが集まってきた。 |
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その数は少しずつ増え、気がつくとご覧の通り。 |
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せっかくなので全員集結させ、守衛さんも一緒に記念撮影。 この子たちも現在では中年であろう。 |
ここでも何の問題もなく工場内に招き入れられた。
先ずは運行を管理していると思われる事務所を訪問。
蒸気機関車の状況を聞き、ガティアが撮影スケジュールを組む(たぶん)。
路線地図。 機関車ナンバーがマグネットになっており、現在位置が分かるようになっている。 |
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運搬軌道のデータが掲示されていた。 |
これによると蒸気機関車は9両あり、路線総延長は164.7kmとのこと。
ただし、恐らく軌框を使う伐採線は含まれないものと思われる。
マリンブルーロコ!
ハワイアン・フィリピンの蒸気機関車は鮮やかなマリンブルーをまとっていた。
社名もそうだが、風体までもアメリカっぽい。
隣は修理工場のようだ。 | |
開いていた煙室扉を閉めて…(^^♪ | |
給砂だろうか、ラ・カルロッタよりも設備がしっかりしている。 |
機関車たちは大半が現場に行っているとのことで、構内は閑散としていた。
そう! 我々はその現場に行きたいのである。
そんな希望は百も承知とばかりに、ガティアが待機していたDLのキャブに誘った。
よく見ると、DLはサトウキビ運搬用ではない一般の貨車を牽いている。
積載物は聞き漏らしたが、一般貨物か何かを運ぶ路線なのだろう。
そしてこの列車が行く先に、どうやら蒸気機関車がいるらしいのだ。
それまで運転台にいた作業員たちは追い出され、後ろの貨車にしがみついていた。
この列車で撮影に出かける! | |
前面窓が…(*_*; |
割かし広い道路にさしかかった。 聞けば「ハイウェイ」らしい。 |
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線路を塞いでいた遮断機を道路側に移動している。 |
駅?の手前で停まってもらい撮影会(^_-)-☆
積荷が気になる。タンク車もあるし… | |
蒸気機関車だったら良かったのにねぇ… | |
ゆっくり進むと施設構内へと入ってゆく。 |
ここにはサドルタンクの8号機がいた
貨車の中継地点? まあ駅なのだろう。
DLは貨車から離され、入換作業を始めた。
8号機は、これから列車を牽いて出発するらしい。
ボールドウィン製のアウターフレーム&サドルタンク
8号機だが、テンダーの番号は何故か9だった。 | |
8号機が入換作業を始めた。 群衆は機関車撮影の物好きな日本人を見るため(笑) |
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この路線の役目をキッチリと取材すべきだった…(+o+) | |
近所には人家が多いのだろう。 群衆はますます増加しているように見えた。 |
駅はずれには川沿いの場所があった
この8号機に乗り込む。近くに撮影好適地があるらしい。 | |
南さんがゴマすり用のポラロイドで撮影、写真を渡しているところ。 その場で撮った写真がすぐに見られること、当時はまだ珍しかった |
8号機に乗って出発。
途中、川沿いに進む区間があり、こんな場所で撮影してみたいという気がムズムズと…。
そんなことはお構いなしに機関車は進んでゆく。
この界隈では川の上に住宅を設けて生活していた。
家々には子供たちがたくさんいて、機関車から手を振ると喜んで川へと飛び込んで見せる。
何とも長閑で微笑ましい光景だが、残念なことに写真をぜんぜん撮っていない。
ただ、南さんがこのシーンを8mmで撮影していた。
現在ではDVD化して保存しているそうで、久しぶりに見てみたいと思う。
やがて視界が大きく開けた。
ここで降ろしてもらった
我々を降ろすと、列車は今来た道をゆっくりと引き返して行った。
そして…
再びこちらへ向けて発車!
(^^♪
ネグロス島の蒸気機関車はサトウキビ運搬が主な仕事ゆえ、
その活躍する姿は必然的にサトウキビ畑や工場ばかりになってしまいがちだ。
このような風景の中をゆく汽車は、あまり撮影されていないようである。
また、牽いている貨車も特徴的だ。
世間に出回っている写真はサトウキビ運搬ばかりであり、有蓋車を牽引している様子は見たことがない。
だいたい予備知識として、こんな貨物列車があったことさえ知らないし。
ここはお膳立てをしてくれたガティアに感謝する他はないだろう。
素晴らしい出会いに感謝!
所で、この湖沼は何なのだろう。
人工池? 何かの養殖場?
それとも自然のものなのか、今となっては知る由もない。
ふたたび8号機に乗って移動する。 | |
4名の乗務員によって8号機は動かされていた。 特殊な燃料を用いていることもあり、通常よりも人出を必要とする。 |
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ただでさえ狭い運転台に乗務員が4名。 そこに我々が加わって8名の大所帯となった(笑) |
燃料のバガースは、テンダーに積まれている状態だとかなり大きい立方体である。
そのままでは焚口戸から入れられないため、適当な大きさに分割しなければならない。
テンダーは広くて背も高く、バガースが山積みされていた。
そこからバガースを運び出し、くべられる大きさにカットするという作業だけで1名を要する。
小さくされたバガースをリレーし、罐焚きをする係が1名。
機関士、機関助士が1名ずつ、計4名で蒸気機関車を運転していた。
とても効率が悪いようにも思えるが、致し方なかったのだろう。
この路線は現在どうなっているのだろうか…
畑のど真ん中でフォトストップ。 | |
収穫の終わった畑だろうか、荒涼としていた。 | |
更に移動すると、町が近づいてきた。 |
人々の生活と共に汽車が存在していた
町のメインストリートを横断する踏切。 汽車は遮断機で道路の交通が止められるのを待つ。 |
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ここは先程DLに乗って通った踏切だった。 どうやら町の中心地らしい。 |
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やがて機関車はゆっくりと動き出す。 |
日に幾度の列車が通ったのだろうか
踏切での撮影会。
記憶が定かではないが、貨車を置いて単機で行き来したような気がする。
安全面を考慮してのことだろう。
旅客輸送はないと思うが、何となく駅のような雰囲気だ。 | |
ジプニーやトライシクルが出入するので、ますます駅の様相である。 |
この日は印象的な風景に出会えたものの、撮影効率は悪かった。
既に陽は西に傾いている。
町の踏切で撮影した後、併用軌道のような処で8号機の単機を撮影していた。
牽いていた貨車はどうしたのだろうか。
このあたりの記憶が全くない。
天秤棒に荷物をぶら下げて運んでいた。この地の慣習なのだろうか。 | |
右手奥にサトウキビを積んだ貨車が見える。中継所なのかも知れない。 | |
そして、これが本当に謎。 なぜかトライシクルに乗っている… |
トライシクルの乗車体験?を最後に、この日の撮影は終了している。
バコロドに戻り、この夜はガティアが仕切ったの歓迎会が催されたはずだ。
何処かに記念写真が残っているはずだが、今のところ探せていない。
割かし高級なレストランだったと思う。
ここのシーフードがとにかく旨かった。サンミゲルがグイグイ入ってゆく。
好き放題に呑み食いしたところ、勘定はガティアの月収の半分ほどに達したという。
ガティアは驚愕の表情をしていたが、実際に支払ったのは南さんであった(笑)
じゃんじゃん!
【使用機材】
ペンタックスMX
ペンタックスME-Super
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